派遣登録時に身分証明書の提出は必要なの?
インターネットの口コミサイトなどでは、“派遣会社に登録に行ったら身分証明書の提出を求められたけど、これって普通のことなの?もしかしてあやしい派遣会社なのでは?”
といった疑問や不安をしばしば目にします。また、“身分証明書として出せるものが何もない”とお困りの方もいるようです。
そこで今回は、派遣登録の際に提出する身分証明書や、その必要性について詳しく調べていきたいと思います。
派遣会社に身分証明書は必要なのか?
派遣社員になるためには、多くの場合、初めに派遣会社のホームページに自分のプロフィールを入力して仮登録をします。その後、派遣会社主催の「派遣登録説明会」に参加し、一般常識やパソコンのスキルチェックなどを行った上で本登録を行います。
この本登録の際に、履歴書や職務経歴書・印鑑などと共に、身分証明書の提出も求められます。では、なぜ身分証明書が必要なのかというと、身元を明らかにするためです。
派遣会社は、派遣先の企業に人材を提供するという役割を果たしています。ですから、万が一、この人材が派遣先の企業で何か問題を起こした際に、どこの誰かも分からないということでは困るのです。
派遣スタッフの管理は派遣会社の責任ですから、きちんとした派遣会社であれば、身分証明書の提出を求めることは当然です。
また、身分証明書の提出には、給料の支払い方法が銀行振込である場合、口座番号が本当に本人のものであるかを確認する意味合いもあります。
工場での製造系・作業系の仕事や物流系、飲食系、イベント系など短期雇用がメインの派遣会社で「履歴書不要」というケースは割とありますが、身分証明書が不要という派遣会社はほぼないと考えて良いでしょう。
身分証明書として使える書類一覧
身分証明書としての効力を持つには、基本的に以下のようなものでなければいけません。
1.有効期限内の公的機関発行の証明書
2.氏名・生年月日・現住所を確認できるもの
運転免許証やパスポートであれば間違いないですが、最近はどちらも所有していないという人も多く、その場合は健康保険証が有効である場合がほとんどです。他にも証明書として使用できる可能性のあるものがいくつかあるのでご紹介します。
■自動車免許証(原付免許証でもOK)
■パスポート
■マインナンバーカード
■顔写真付き住民基本台帳カード(マイナンバーカードの交付開始に伴い、現在発行は終了していますが、期限切れまでは有効)
■住民票
■国民健康保険被保険者証
■健康保険被保険者証
■マインナンバー通知カード
■年金手帳
原付免許は、1万円以内の費用と簡単な試験で即日取得することができます。住民票が必要になりますが、写真付きの公的な身分証明書として今後何かと役に立つのでオススメです。
また、電気・ガスなどの公共料金の請求書が身分証明書として認められることもあります。どんな身分証明書であればOKなのかは各派遣会社で異なるので、提出すべき書類がない、いずれも用意できないという場合は直接派遣会社に相談してみましょう。
住所不定の人が派遣登録をすることは無理?
派遣会社に登録する身分証明書には、“現住所が確認できるもの”という条件があるものがほとんどです。
実際のところ、大部分の派遣会社では現住所が確認できなければ仕事の紹介はおろか、登録することさえできません。さらに免許証・パスポートなどの身分証明書を作る際にも必ずと言っていいほど住民票は必要になってきます。
では、様々な事情により住所が定まっていない人、つまり「住所不定」の人が仕事をすることは不可能なのでしょうか。実は、住所不定の場合でも仕事をすることができるいくつかの方法があります。
居候させてもらう
親戚や友人・知人の家に一時的に居候させてもらい、そこを現住所として申告させてもらうという方法です。そして、携帯電話料金などの請求書の宛先を居候先の住所に変更すれば、派遣会社に出す証明書として使用できる場合があります。
インターネットカフェを利用する
インターネットカフェの中には長期滞在を条件に「住民票登録・郵便物受取の代行」をしてくれるところがあり、一部の自治体ではこの住民票登録サービスを認めています。現住所として申告することで、派遣登録ができる可能性があります。
自立支援センターを利用する
働きたいが働くことができない、住む場所がないなど、生活に困窮している人が一定期間無料で衣食住の提供を受けることができ、また就労支援やアパート生活への移行指導をしてもらうことができる全国にある福祉施設です。
この自立支援センターの住所を現住所として申告することができるため、派遣登録や就職活動をすることが可能になります。
就労支援センターを利用する
ネットカフェ難民や路上生活者など住居を持たない人たちに就労による自立の手助けを行っている団体です。民間企業などから正社員・契約社員・パート・アルバイトなど様々な形態の求人情報を集めて就業機会の確保をしており、職種も介護・製造・飲食・清掃など多種多様です。
住居に関して困っている場合は、お住まいの地域の自治体(市役所・区役所)に問い合わせるのが一番です。ほとんどの場合、生活支援や就業支援の窓口があり、住まいのない方が仕事をし、自立していくための様々な対策を講じています。
派遣登録時に前職調査をされることはあるのか?
前職調査とは、新しく働くことになった勤務先が以前働いていた勤務先に、その人がどのような人物だったか、どのような働きぶりだったかを確認する目的で行うものです。
雇う側としては、過去に何か問題を起こしたことがあるなど、今後トラブルを起こす可能性がある人はできれば雇いたくないというのが本音です。調査する内容としては以下のようなものがあります。
●履歴書や職務経歴書の記載は正しいか(経歴詐欺はないか)
●勤務態度はどうだったか
●残業代請求に問題はなかったか
●健康状態は良好か(特にうつ病などを発症していないか)
●退職の仕方に問題はなかったか
●組合活動をしていなかったか
しかし現在では、派遣登録時に前職調査を行っている会社はほとんどありません。なぜなら、調査には人員も手間も費用もかかるうえ、近年は個人情報保護の観点から、前職調査は違法とする意見が多数だからです。
また、派遣社員に求められているのは、派遣先の希望通りに仕事をこなすスキルであるため、それほど調査の必要性を感じないということも理由です。
ただし、顧客の財産を扱う金融関係の仕事(銀行・証券会社・保険会社)や、給与が高い管理職、また警備会社などは行う場合があります。ただし、現在就業中の方が派遣会社の登録を行った場合は、勤務中の会社に対して前職調査を行うことはありません。
派遣会社へのマイナンバー提出について
2016年から導入された「マイナンバー制度」は、全ての国民に個別の管理番号をつけることで、社会保障・税金・災害対策などに関する手続きをスムーズに行い、国民に公平かつ公正にサービスを提供するためのものです。
派遣会社は、派遣社員の社会保障(雇用保険や社会保険・年金など)と、税金(年末調整など)の手続きを行うために、マイナンバーを知る必要があります。そのため、派遣登録をする際には、必ずマイナンバーの提出を求められます。
とは言え、個人情報のかたまりであるマイナンバーを、派遣会社に提出することに不安を覚える人もいるでしょう。しかし、マイナンバーの管理には以下のような条件が設けられているため、きちんとした派遣会社であれば心配する必要はありません。
1.マイナンバーの利用目的を明確に伝える
2.説明した目的以外でマイナンバーを使用しない、また不正使用した場合は罰則が適用される(場合によっては刑事罰・損害賠償の可能性もある)
3.マイナンバーが記載された書類の管理や入力されたパソコンのセキュリティーは万全にし、所定の保管期間後はシュレッダーにかける、または消去する
派遣会社の個人情報取り扱いや流出について
2005年に施行された個人情報保護法により、個人情報の取扱い範囲や管理方法は厳密に定められています。そして、万が一これに違反した場合には業務停止など厳しい罰則がありますので、大手だけでなく中小の派遣会社も個人情報の扱いに関しては細心の注意を払っているというのが現状です。
また、身分証明書やマイナンバーから得た情報は派遣会社でのみ使用し、派遣先の企業に見せることは決してありません。なぜなら、派遣先の企業に個人が特的できる情報を提供・提出することは法律上禁止されているからです。
とはいえ、過去には派遣会社に登録している個人情報が大量に販売されていたという事件が実際にありました。また、故意ではないにしても、個人情報が記載された書類を紛失したり、メールをご送信したりすることで情報の漏えいが起こることもあり得ます。
どの派遣会社でも個人情報の漏えいが100%ないとは言い切れませんが、ある程度大手で知名度の高い派遣会社あれば、情報漏えいを防ぐための様々な対策を講じていますので、むやみに心配する必要はないでしょう。
派遣登録時に身分を偽ったらどうなる?
派遣登録時、「少しでも担当者に良い印象をもってもらいたい」、「良い仕事を紹介してもらいたい」という思いから、経歴詐称をする人も少なからずいるようです。
例えば、有名大学を卒業した、大企業に在籍していたという全く自分の経歴とは異なるものから、中退したのに卒業したことにする、勤務期間が1年なのに3年働いたことにする、有名企業の子会社で働いていたのに親会社で働いていたことにするといったものまで、その内容は様々です。また、実際には保有していない資格を記載する、パソコンや英語力などのスキルなどを実力以上に書くといったこともあるでしょう。
このような経歴詐称が発覚した場合、派遣登録が無効になり、今後その派遣会社には登録できなくなる可能性があります。また、詐称をした人物が紹介先の会社で何らかの問題を起こした場合、派遣会社の信用問題にもなりかねませんので、何らかの損害賠償を請求される可能性もあります。
また、そこまでの大ごとにはならなくても、スキルなどの詐称はすぐにバレてしまいますし、派遣会社からの信頼を失えば望むような仕事を紹介してもらえなくなることも大いに考えられます。
自分を良く見せようとして故意に詐称することはもちろん、単に記載間違いだったとしても、のちに問題になることがあるため、派遣登録会でプロフィールを入力する際や履歴書・職務経歴書を作成する際は、十分に注意しましょう。
まとめ
派遣会社に登録するためには、身分証明書やマイナンバーの提出が必要であることやその理由がお分かり頂けたでしょうか。
個人情報を提出することに抵抗のある人は沢山いらっしゃると思いますが、派遣会社にしても身元の分からない人を雇うことは大変リスクのあることです。また、業務上必要なことでもあるため、提出がどうしても嫌だという場合は、その派遣会社は諦めるほかありません。
現在は情報漏えいや悪用に対しての罰則も厳しいため、あまり心配する必要はありませんが、何か気になることがあれば、派遣会社の担当者に直接聞いてみましょう。その場合の対応の良し悪しでも、信頼できる派遣会社かどうかの判断はある程度つくのではないでしょうか。