派遣登録の解除について
一度派遣会社に登録すると、派遣登録を解除することはできるのでしょうか。また、解除ができるとしたら、どのように手続きを行えばいいのでしょうか。派遣登録の解除について詳しく紹介します。
派遣の契約期間中の登録解除はできるのか？
派遣会社から仕事を紹介され、条件面など合意の上で派遣の契約を締結したにも関わらず、さまざまな理由から派遣登録を解除したいと思った場合、契約期間中の登録解除は可能なのでしょうか。
答えは「法的には登録解除できる」です。
但し、登録解除できるのは、どうしても辞めざるを得ない理由がある場合に限りできることであって、「仕事がつまらない」「もっと楽な仕事に転職したい」「職場に嫌いな人がいる」といった本人都合の安易な理由では、契約期間中に登録解除はできないと思っておいた方がいいでしょう。
ここで、理解しておきたい注意点として、派遣契約について見ておきましょう。
派遣契約とは？
派遣の契約には、派遣登録をしている派遣社員と派遣会社の間で締結される「雇用契約」と、派遣会社と派遣先の企業との間で締結される「派遣契約」があります。
このような三者の契約によって派遣は成り立っています。ですので、契約期間中に登録解除をしたいと思っても、派遣先への大きな影響や損害を与えてしまう可能性もあり、簡単にはこの契約を破棄できません。
やむを得ない事由であれば解除はできる
民法628条によると、「当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。
この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う」とあります。
また、雇用契約法第17条にも「やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない」と記されています。
これは、契約を締結している三者のうち、いずれかが一方的に契約期間中に契約解除をすることはできないが、やむを得ない事由に限り契約を解除できるということです。
やむを得ない事由とは？
派遣の契約期間中に登録解除がしたい人の理由はさまざまだと思いますが、どういった理由がやむを得ない事由にあたるのでしょうか。
これは、個々によって契約内容や事情が異なるので一概には言えませんが、健康上の理由や家族の事情の場合に限っては、常識的に考えて労働力の提供を継続することが難しいと判断されるでしょう。
その他の事由については、派遣会社と派遣先に説明をして納得してもらえれば、やむを得ない事由として解除が認められる可能性があります。
「電話応対がないと聞いていたのに実際には対応させられる」などの最初に聞いていた仕事内容と異なる業務がある場合は、いきなり契約解除をするのではなく、派遣会社にその旨を相談し、今後の対策を考えてもらった方がいいでしょう。やむを得ない事由に見なされるかどうかはケースバイケースであるようです。
また、やむを得ない事由に当てはまらなくても、双方の合意が得られれば派遣契約の解除を行うことができます。
職場に合わない上司がいる場合や、自分のスキルが生かせない、あるいは自分のスキルではその仕事を続けていくのが難しいなどという場合にも、まずは派遣会社の担当スタッフに相談してみてください。
派遣登録解除の方法
派遣の契約期間中であれば、まずは契約解除の意向を、雇用者である派遣会社の担当者に事前に伝えなくてはいけません。派遣会社と派遣先双方の合意が得られれば契約の解除が行われ、その後派遣登録の解除を行うという流れになります。
現在、派遣の契約もなく派遣会社を利用する予定がない人は、手続きを行えば派遣登録の解除が可能です。派遣登録の退会方法は、派遣会社によって違います。
多くの派遣会社が、電話またはＥメール、派遣会社のWebサイトにあるマイページなどから退会手続きを受け付けています。特に面倒な手続きや審査などはないので、簡単に登録解除することができます。
派遣登録解除にかかる期間
基本的に、こちらから派遣登録解除を申し出た場合はすぐに登録解除が行われます。手続きの関係で数日要する場合もありますが、登録解除に時間が掛かることはありません。
では、こちらから登録解除の申し込みがなければ、登録は継続されるのでしょうか。派遣会社によっては、派遣登録の有効期限がある場合があります。
有効期限がある派遣会社では、一定の期間が過ぎると自動的に登録した情報が抹消されます。この期間は派遣会社によって異なりますが、有効期限は2年としているところが多いようです。
また、登録抹消前に電話やメールで意向を確認してから登録抹消を行ったり、最終連絡日から期限をカウントしたりと、派遣会社それぞれの規定によって抹消方法や抹消時期は異なるようです。詳しくは各派遣会社の規定などを確認して下さい。
なぜこのように有効期限を設けているのかというと、平成17年に施行された「個人情報保護法に関する法律」によるところが大きく、派遣会社側が個人情報の漏洩リスクに備えている為です。
履歴書や職務経歴書などの個人データを長期に管理すれば個人情報の漏洩リスクにつながるため、期限を設けているのです。
派遣登録解除の理由いろいろ
派遣登録解除の理由は人によってさまざまです。登録解除を申し出た時に、なぜ登録解除をするのか理由を質問されることもあると思いますが、嘘をつかず正直に答えて特に問題はありません。
派遣契約期間中でなければ退会するかどうかは個人の自由意思です。
実際に派遣登録解除をした人の理由はどのようなものだったのか紹介します。
- 就職が決まった
- 結婚や出産などでしばらく働く予定がない
- 希望条件に合う仕事や職種が紹介されない
- 自分に合う転職支援サービスが見つかった
- なかなか仕事が決まらない
- 転居のため
- 電話連絡やメールが頻繁にくるのが煩わしい
派遣登録解除の理由の多くは、「正社員の仕事が決まった」「結婚や出産、転居などで環境が変わった」というものが多いようです。あとは、「仕事が紹介されない」「仕事が決まらない」といった派遣会社との相性の悪さが理由の場合も多いです。
派遣登録解除後の個人情報はどうなる？
派遣登録をする際には、氏名、住所、携帯電話番号、メールアドレス、学歴、職務経歴、身分証明書など派遣会社にたくさんの個人情報を開示・提出しています。これらの個人情報は、派遣登録解除後いったいどのように扱われているのでしょうか。
提出した個人情報などを返却している派遣会社は殆ど無いようですが、派遣登録解除時に個人情報の削除を依頼するとすみやかに対応してくれるようです。
また、派遣登録解除時に個人情報を破棄する派遣会社もあります。個人情報の取り扱いに関しては派遣会社ごとによって異なるので、派遣登録解除の際に確認しておくといいでしょう。
但し、登録していた派遣会社で就業履歴がある場合は、労働基準法に定められた期間、記録の保存が義務付けられているので上記の通りではありません。
労働基準法第109条には「使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を三年間保存しなければなりません」と定められています。
ですので、派遣の雇用契約満了後3年間は、派遣登録の解除を行って個人情報の破棄を求めたとしても個人情報が保管されます。
派遣登録解除を行わないとどうなるのか？
これまで派遣登録解除について説明してきましたが、しばらく派遣会社を利用する予定がないにも関わらず、派遣登録解除をせず、派遣会社に籍を入れたまま状態にしておくとどうなるのでしょうか。
有効期限が来ると抹消される
上述した通り、派遣会社によっては定められた期間が到来すると自動的に登録が抹消されます。派遣会社に登録解除の連絡をするのが面倒な人は、そのまま放置しておくのもありかもしれません。
定期的に連絡がある
派遣登録をしている限り、現状確認や求人案件を紹介する電話が入ったりお知らせメールが届いたり、定期的に連絡があります。
派遣会社を利用する予定があるのであれば、仕事情報が入るのは有意義なことですが、今後一切派遣会社を利用する予定がないのであれば、煩わしく感じるかもしれません。
総括
派遣登録の解除は、どのような理由があっても簡単に行うことができるので、登録の取り消しを希望する人は、派遣会社の規定に則って手続きを行いましょう。
注意したいのが派遣の雇用契約期間中の場合です。法的には契約中でも派遣登録の解除を行うことはできますが、あくまでもやむを得ない理由がある場合に限ったことです。また、派遣登録の解除の前に雇用契約の解除をする必要があります。
雇用契約に関しては、契約を締結している以上、定められた期間は責任を持って雇用契約を履行する必要があるので、安易な理由で契約解除をすることはできません。
更に、派遣の契約期間中に契約解除が認められたとしても、相手方に損害を与えた場合、損害賠償の責任を負わなくてはいけないことも頭に入れておかなくてはいけません。正社員でないとはいえ、社会人としての責任が必要になります。
今は派遣会社からの応募を考えていないけれど、この先また派遣会社を利用するかもしれない人は、敢えて派遣登録の解除をする必要はありません。
しかし、就職の決定や今後一切派遣会社を利用する予定がない場合は、派遣会社に登録している限り勤務状態の確認や求人情報の紹介連絡が入ることがあるので、派遣登録の解除をすることをおすすめします。
